
数ヶ月に一度通うだけのPMTC、金額だってそんなに高くないPMTCですが、自発的にきちんと予防に通う患者さんは稀です。PMTCの予約をしていても来てもらえなかったり、予約すら入れてもらえなかったりすることもあるでしょう。
あれやこれや手を尽くして、リコール(再来院)率がやっと40〜60%の医院が多いようですが、患者さんの10%しか再来院しない医院があれば、ほぼ100%再来院してもらえる医院もあります。この違いはどこから生まれてくるのでしょうか?
「年を取ったら歯が抜けて、入れ歯になるのは当たり前」
こんな風に思い込んでいる生活者がほとんどですが、歯が抜ける最たる原因である歯周病は、歯科医院で治療して、その後定期的にPMTCを受ければかなりの確率で良くなっていくという事実を知る人は非常に少ないと思います。
治療の合間の限られた時間に「悪くなる前に予防した方がいいですよ」と患者さんに言う先生は多いかもしれません。でも、そんなことは患者さんも分かっています。予防はしないよりした方がいいに決まっています。
再来院率が高い医院と低い医院の違いは、「なぜあなたにとって予防が大事なのか。予防をするのとしないのとであなたの未来がどう変わるか」ということを、はっきり分かりやすく患者さんに伝え続けているかどうかなのです。
どんなに安いものでも、自分にとって必要ないと思えば生活者は買いません。反対に、自分にとって有益なものだ、必要だと感じたら、多少時間がかかることでも、多少高いものでも買います。
ホームページで予防の大切さ、歯周治療をすることの大切さを伝えている歯科医院、患者さんに本当の情報を伝えよう、患者さんの歯を本気で守ろうとしている歯科医院は、再来院率が非常に高い傾向があります。
悪くなった歯をどんどん抜いて入れ歯やインプラントに持っていこうとするのではなく、それはどうしても歯を抜かざるを得ない状況になった場合の最終手段。もし先生が「できるだけあなた(患者さん)の歯を守れるように、私とあなた、そしてスタッフの全員で最善の努力をしていきましょう」というスタンスで治療にあたっているのでしたら、そのことを患者さんに伝えてください。
先生が、患者さんの将来を思って歯周治療やPMTCを患者さんにすすめたいのでしたら、(よく見かけるホームページのように)最初から歯周治療の具体的な内容やPMTCの工程について事細かに説明するのは間違っています。その前に患者さんに伝えなくてはいけないこと。それは、患者さんに正しい情報と先生の思いです。患者さんに、まず安心感、信頼感を与えてあげてください。

歯が痛くなったら歯科医院に行って、治ったらまた別の歯が痛くなるまで歯科医院に行くことはない――というのが以前の常識でした。でも、予防の大切さが少しずつ、本当に少しずつですが、生活者の間に広まってきています。
リコール率は、歯科医院によって全く違います。リコール率が40%〜60%という医院が多いようですが、10%という医院があれば、その対極にほぼ100%という医院もあります。新しい患者さんが一定の割合で来院するとして、再来院率が高いのと低いのとでは、医院経営に大きな差が生まれてしまいます。
新患の数も少なくて、再来院率も低い、という場合は医院経営の見直しが急務ですが、
新患の数はそこそこだけれど、一通り治療が終わった後のリコール(再来院)率が低い場合には、「患者さんに、定期的なPMTCの大切さが伝わっていない。先生やスタッフと患者さんとの信頼関係ができていない」ことが大きな原因として挙げられます。
定期的に歯の検診を受けてPMTCをすることで、歯が長持ちする。年を取ったら入れ歯になるのが当たり前じゃない、ちゃんと手入れをすれば歯を残すことができる。自分の歯以上に快適なものはない。口の健康が、全身の健康と密接に関係している。定期的なPMTCをすると、一生のうちに使う医療費が少なくて済む――。
歯科医なら誰でも知っているはずのこういった情報を、一般の生活者はほとんど知りません。
患者さんは、単に面倒くさいからPMTCに通わないわけではありません。PMTCに通う「意味」が見出せないから、面倒に感じてしまうだけなのです。
最近は、歯科医院に行く前にインターネットで調べて、いろいろな医院を比較してから一つの歯科医院を選ぶ人が非常に増えています。「この先生が信頼できる先生か、私のことを大切にしてくれるだろうか」といったことを見極めようとしているのです。
先生が患者さんの将来を思って定期検診をおすすめしているのなら、ホームページでそのことをきちんと伝えるべきです。ホームページは24時間毎日、先生に代わって定期検診やPMTCの大切さ、そして、患者さんを大事に思う先生の気持ちを発信し続けてくれます。
患者さんと先生の信頼関係はそこから生まれ、治療が終わって再来院する間にも育ち続けます。
 

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